凛として時雨

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Interview

Interview

ピエール中野

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小室哲哉

中野
今日は本当に嬉しいです。想像もしてなかった事態が今、目の前で起こっています(笑)。まさか小室さんとお話させていただける日が来るとは……。
小室
こういう対談って、ついつい話し込んじゃうよね。もう始めちゃいます? (笑)
中野
はい! よろしくお願いします。

──じゃあ最初はベーシックな質問から。中野さんが初めて小室さんの楽曲を耳にしたのは?

中野
小学2~3年のころですね。僕は1980年生まれなんですけど、兄が10個上で、思いっきりTM NETWORKにドハマりしてる世代だったんです。ある時、兄が家で、『逆襲のシャア』っていうガンダムの映画を観てて。僕は子供だったから映画の内容は難しくて理解できなかったんですけど、ラストに流れたTM NETWORKの「BEYOND THE TIME(メビウスの宇宙を越えて)」を聴いて、それまで感じたことのないような衝撃を受けたんですよ。それで「この音、何!? 誰が歌ってるの!?」って兄に訊いたら、TM NETWORKだよって教えてくれて。音楽をカッコいいものだと意識した最初の曲がTMの「BEYOND THE TIME」だったんです。
小室
なるほど。お兄さん、偉いですね(笑)。
中野
ははは。
小室
お兄さんがTMにハマったのは、いつぐらいの時期なのかな。シングルでいえば「Get Wild」とか?
中野
だと思います。兄に「Get Wild」を聴かせてもらった時、「この曲、昔、聴いたことある!」って思ったので。
小室
その時期、TMにハマった人って凄く多くて。当時、バンドブームの始まりぐらいの時期で、凄い数のバンドが出てきて。中でも抜きん出てたのが、BOφWYだったんだけど。
中野
凄い人気だったみたいですね。
小室
当時はTMとBOφWYが比較されたりすることが結構あって。それこそ学校のクラスの中でも、BOφWY派、TM派みたいな感じで分かれてたり。
中野
2大勢力というか。
小室
実際はBOφWYのほうが圧倒的に売れてたんだけど(笑)。当時の僕らはBOφWYに追いつけ、追い越せが目標で。
中野
BOφWYとは世代も近いですよね。
小室
うん。彼らのほうがちょっと若いけど、ほぼ同世代。デビューしたタイミングも同時期だったんだけど、向こうのほうが先にブレイクして。当時はU2に代表されるような、トリッキーなギター・サウンドとシンプルなリズムでアンサンブルを組み立てていくバンドが多くて、まさにBOφWYはその代表みたいなバンドだったから。布袋君のギターを中心にアンサンブルを構築するっていう。TMでは彼らの正反対のことをやろうと思ったんだよね。で、僕はシンセサイザーで布袋くんの役をやろうと思って。
中野
そうだったんですね! じゃあ当時、BOφWYをかなり意識していたわけですか。
小室
相当意識してましたね。
中野
それは意外です。
小室
しかも、うちのヴォーカルのUTSU(宇都宮隆)と、氷室さんと、あと西城秀樹さんと、3人の声が有線で流れてきた時に、たまに一瞬、分かんないときがあって(笑)。
中野
確かに皆さん、若干ハスキーな歌声ですもんね(笑)。
小室
まあ、そんなこともあって、BOφWYは常に気になる存在で。決定的だったのは、彼らが「B・BLUE」という曲を出した時。ある意味、歌謡曲っぽいというか、日本のリスナーにも受け入れられるような要素が上手く入っていて。あの曲を聴いて、TMのサウンドにはあまりにも日本的な要素が足りなすぎると思って。それで、「BE TOGETHER」という曲を作ったんだけど。
中野
のちに、鈴木亜美さんがカヴァーすることになる「BE TOGETHER」。
小室
それこそ、「B・BLUE」に対抗して、同じ「B」から始まってみようか、みたいな。
中野
そうだったんですね(笑)。
小室
今だから話せることだけど(笑)。でも、当時は今みたいにシンセサイザーだったり、打ち込みのサウンドが世の中に認知されてなかったから、ギターを中心としたロックバンドが人気を集めるのは当然といえば当然なことなんだけど。「四つ打ち」という言葉も知られてなかったし。
中野
今でこそ、四つ打ちってロックのフィールドでも完全に浸透してますけど。
小室
そもそも当時は、「このリズム、人が叩いてないじゃん」とか、普通に言われる時代だったから(笑)。リスナーにとっても、僕らの作るサウンドやリズムって、どこか違和感があったんじゃないかな。あくまでもドラムは生でっていう時代だったから。
中野
ちなみに今までお仕事ご一緒したり、ライヴをご覧になった中で、一番印象に残ってるドラマーを挙げるとすると誰になりますか?
小室
すでに亡くなっちゃってるんだけど、TOTOのジェフ・ポーカロかな。
中野
ジェフ・ポーカロは、『ドラムマガジン』っていうドラム専門誌でも、ドラムヒーローランキングで1位に選ばれていました。
小室
彼のドラムは凄く独特で、黒人的でもなければ白人的でもなくて、ちょうどその真ん中ぐらいのスイング感っていうか。ドラムのチューニングも気持ちいいし。
中野
音作りもタイム感もストロークも全部いいっていう。
小室
そうだね。シンプルなプレイに徹してるんだけど、ちゃんと凄いこともできて。これみよがしにテクニックをひけらかしたりしない姿勢も、プロフェッショナルだなって思うし。日本人のドラマーでいえば、山木秀夫さん。一緒にセッションすると、ほとんどジャズみたいな感じになっちゃうんだけど(笑)。
中野
山木さんは、インプロでライヴやられたりしますよね。僕も何度か拝見したことあります。
小室
山木さんには昔から本当にお世話になっていて。プレイヤーとしても色んなことを教えてもらったし。
中野
冒頭でもお話したように、僕は小室さんの楽曲で音楽に目覚めたんですけど、特に小室さん独特のリズム感に影響を受けていて。4分音符の入れ方とか、リズムの構築の仕方だったり。小室さんがどういうリズムに影響を受けたのかずっと興味があったんです。今日はそのあたりのお話も聞きたいなと思っていて。
小室
基本的には手癖なんだけど(笑)。でも、しいて言えば、さっきも話したように、僕はギタリストに対するライバル意識みたいなものがあるので(笑)。ギターって、ある種、一番肉声に近いエモーションを生み出せる楽器だと思うんだけど、鍵盤楽器でいかにしてギターに対抗できるかっていうことをずっと試行錯誤していて。たとえばギタリストがカッティングでグルーヴを生み出すように、鍵盤でも何か違った形でグルーヴが生み出せないかと思って。
中野
聴き手がついつい体を動かしてしまうような。
小室
踊らせるまでいかなくてもいいけど、どうしたら気持ちいいグルーヴが生み出せるんだろうと思って。その頃、ヒントになったのがハウス・ミュージックだったんだけど。
中野
へえ、ハウスだったんですね!
小室
さらに言えば、ハウスのルーツになっている、ラテンのリズム。昔、マイアミでレコーディングしたことがあったんだけど、マイアミってキューバとか南米出身の鍵盤奏者が沢山いて、彼らのプレイって本当に凄くて。
中野
ラテン系の鍵盤奏者の演奏って躍動感がハンパないですよね。ハジけるような演奏っていうか。
小室
目の前で見たら本当にぶっ飛ぶぐらい凄いの。どうやったら、こんなに色んなリズムが出てくるんだろうって。リズムを4つで取ろうが8つで取ろうが、基本的にどれも気持ちよくて。彼らの演奏には凄く影響を受けてると思う。
中野
なるほど。めちゃめちゃ興味深いお話です。
小室
いかに跳ねたリズムを入れてグルーヴを出していくかっていう。昔のモータウンの楽曲とか、どれもリズムがジャストじゃないんだけど、その微妙なズレが独特なグルーヴを生み出していて。そのズレを出したくて、スティーヴィー・ワンダーがロジャー・リンというエンジニアに依頼して70年代後半に誕生したのがリンドラムというドラムマシーン。でも、当時の技術では微妙な“跳ね”が再現できなくて。リンドラムでは僕もさんざん苦労しましたけど(笑)。それが徐々にハットの長さだとかピッチを変えられるように進化していって。
中野
テクノロジーの進化とともに、試行錯誤しながら、自分の理想とするリズムを追求されてきたわけですね。
小室
うん。僕の場合は、ギターへの対抗意識からスタートしたんだけど(笑)。結果的にそれがリズムに対する意識を高めてくれたというか。

──ちなみに中野さんは、ギターという楽器に対してはどんな意識がありますか?

中野
やっぱりロックバンドではメインになる楽器ではありますよね。うちのバンドはギター、ベース、ドラムの3ピースなんですけど、僕はギターのタイム感に合わせてドラムを叩くようにしてるんです。
小室
そうなんだ。
中野
ギターのメンバーが曲を作ってるっていうのもあるんですけど、彼が作ってくるフレーズやリフは凄く印象的なので、そこに当てはめていくと、リズムやグルーヴがぴたっとハマっていくんですよね。
小室
3ピースっていう編成はプレイヤーの個性も見えやすいし、ロックバンドというフォーマットでは一番理想的だと思う。僕自身、ポリスとか3人組のバンドが大好きだし。ポリスはスティングがラインを作ってると思うんだけど、あそこは3人それぞれ個性がバラバラで面白くて。それぞれの持ってるリズム感やスピード感も全然違うし。
中野
あの独特なグルーヴ感が気持ちいいですよね。
小室
さっきの好きなドラマーの話で言えば、2番目に好きなのはポリスのスチュアート・コープランドかもしれない。
中野
僕も大好きです。
小室
あのノリはなかなか出せないと思うけど(笑)。プレイに強烈な個性があるから。真似しようと思ってもしにくいドラマーの一人かもね。
中野
強烈ということでいえば、僕はYOSHIKIさんがフェイヴァリット・ドラマーなんです。
小室
ああ、彼も色んな意味で強烈だよね(笑)。
中野
小室さんとYOSHIKIさんが組んでいたV2も大好きで。雑誌『ヘドバン』の吉田豪さんのインタビューでもV2について結構話されていましたけど。
小室
そうそう。
中野
個人的には、ライヴビデオ(※東京ベイNKホールにて1度だけ行なわれたライヴの模様を収めた『SPECIAL LIVE 1991.12.5 VIRGINITY』)をDVDなりブルーレイで復刻してほしいんですけど、それは小室さんも何度も言い続けてくれてますよね。
小室
まさに、この社屋に入ってるエピックがリリースしたんだけど(笑)。
中野
ですね(笑)。
小室
エピックが動いてくれないことには、どうしようもないかな(笑)。V2は制作費が物凄くかかっていて。たぶんシングル(※「背徳の瞳~Eyes of Venus~」)も、エピック史上、一番お金がかかってると思う。YOSHIKIも凄いこだわりの持ち主なので。あの頃、YOSHIKIとは、それこそ週1ぐらいで会ってたのかな。それで一緒にラーメンを食べに行ったり。
中野
YOSHIKIさんと小室さんでラーメンを(笑)。
小室
で、YOSHIKIはラーメンを食べながら、ずっと両足で16ビートを刻んでいて。
中野
凄いですね! ずっとバタバタと。
小室
でも、テーブルの上からは、足が動いてるのがまったく分からなくて。それぐらい軸がしっかりしてたんだと思うんだけど。彼に関して言えば、ちょっと職人を超えてるところがあったと思いますね(笑)。それこそ、ビデオにも収録されてるんだけど、V2のライヴでは長いドラムソロも披露してくれて。あのライヴでYOSHIKIはあらゆる技を出してくれたんじゃないかな。
中野
V2のライヴでYOSHIKIさんが使ってるのって多分チタンでできてるドラムセットだと思うんです。それって恐らく、レコーディングでしか使ってないセットなんですよ。
小室
そうなんだ。
中野
はい。XのライヴではTAMAのクリスタルのタイプか、ロック・クロームっていう、カバーリングしてあるドラムを主に叩いていたんです。チタンのドラムはレコーディング用に使ってるっていうのを雑誌のインタビューで読んだことがあったんですけど、V2のライヴ映像をみたらチタンのセットを使ってて、これは凄いって思ったんです。音もめちゃくちゃいいんですよ。
小室
マニアックだね(笑)。
中野
すみません(笑)。
小室
でも、言われてみれば、確かに音が良かった。とにかく、彼はとことん物事を追及するタイプだから。レコーディングのときも頭から終わりまで止めないし。
中野
止めないとおっしゃいますと?
小室
ライヴと一緒で、レコーディングでも、ずっとドラムを叩きっぱなしで。
中野
えっ!! あのドラム、1曲丸々通しで録ってたんですか!?
小室
そう。体力的にも集中力的にも叩けて3回ぐらいなんだけど。あの曲はBPMが170か180ぐらいの間ぐらいなんだけど、実はドラム用の譜面があって。16分音符が凄い数並んでて。
中野
細かくちゃんと書いてあるんですね!
小室
うん。だから、譜面がほぼ真っ黒で(笑)。
中野
かなり激しい曲ですもんね。
小室
でもYOSHIKIは、ちゃんと譜面を見ながら叩いてて。あれは本当に凄かった。しかも、めちゃくちゃ譜面が長くて。あれ、横にめくる人いたかもしれないけど(笑)。
中野
あははは。実際、YOSHIKIさんと一緒にプレイしてみていかがでしたか? 
小室
ドラムにしろピアノにしろ、この演奏を見せられたらリスペクトせざるをえないと思わされるというか。あとは、やっぱり華があるなって。エンタテイメントっていう意味では、絶対に敵わない。まあ、型にはまらないタイプなんで、ちょっと手に負えない部分もあるけど(笑)。
中野
ははは。手に負えない(笑)。
小室
当時は、YOSHIKIも20代で若かったし。もう、A&Rだろうが何だろうが、関係ないっていう感じで。
中野
ですよね(笑)。
小室
誰の言うことも聞きませんから(笑)。多分当時、彼が言うことを聞いたのはhideと僕ぐらいだったんじゃないかな。まあ僕に関していえば、言うことを聞くっていうよりも、意見を聞いてくれるって感じだったけど。僕が出す意見に「いいよね」って耳を傾けてくれるというか。V2のレコーディングでは、「小室君に任せるよ」っていうことが意外とあったので。
中野
信頼されてたんですね。
小室
「ミキサーは誰にする?」とか、そういうことも含めて任せてくれて。僕は全体のまとめ役みたいな感じで。とにかく形にして、エピックに納品しなきゃっていう。
中野
めちゃくちゃスリリングな現場ですね(笑)。
小室
ディレクターも、ずっと辞表を持って歩いてたし。
中野
すげえ(笑)。
小室
でも、今思えば、V2って、そういう太っ腹なチームが支えてくれてたから成り立ってたところがあったのかもしれないよね。
中野
なるほど。ちなみにV2再始動の可能性は……。
小室
う~~~ん。やっぱり、「どうにでもなっちまえ!」っていうチームがいないと、ああいうプロジェクトって、なかなか難しいから。僕ら2人の問題というよりも、そういう状況を今作るのはかなり大変だと思うし。
中野
ちなみにV2以降もYOSHIKIさんとの交流は続いていたんですか?
小室
もちろん。今でもすぐに連絡を取り合えるし。なんでも遠慮なく言い合える関係ではあるので。

──ちょっと脱線してしまうんですけど、YOSHIKIさんと小室さんが一緒に洋服を買いにいった時、“棚のここからここまで全部下さい”って二人で競い合ってたっていう伝説がまことしやかに囁かれていまして(笑)。

小室
ははは。そうなんだ(笑)。
中野
僕もそのエピソードが大好きなんですよ。
小室
全然覚えてないけど、そんなことあったかな~(笑)。でも洋服ではない気がする。あるとしたら車かな。
中野
もっとスケールがデカかった(笑)。最高です!
小室
でも、一緒に食事に行った時とかYOSHIKIが奢ってくれたこともあったし。そういう意味でも、僕とYOSHIKIは凄く対等な関係で。とにかく彼は唯一無二の存在感があるし、生粋のエンターテイナーなので。日本って、そういうアーティストが少ないから、やっぱりYOSHIKIは貴重な存在だと思う。

──小室さんからご覧になって、今の日本のロックシーンにはどんな印象がありますか?

小室
イギリスのバンドがアメリカで成功を収めてた時期に近いというか。ストーン・ローゼズとかプライマル・スクリームとかオアシスとか、あのへんのバンドが出てきた頃の感じになんとなく近い印象があって。そういえばオアシスが出てきた頃、ロンドンで彼らのライヴを観たことがあって。たしかプレス向けのライヴだったと思うんだけど、めちゃくちゃ演奏が下手だった記憶がある。
中野
ははは!
小室
ニルヴァーナに相通じるような。音のバランスとか、“こんなにめちゃくちゃでいいの?”っていう(笑)。あと、お兄ちゃんの歌もとんでもなくて。
中野
ノエル・ギャラガーの歌が(笑)
小室
でも、凄くエネルギーがあったし、いわゆる売れ線のロックとは違う自由なパワーみたいなものを感じたんだよね。のびのび自分たちがやりたいことをやってる感じがして。今の日本のロックシーンにも同じような雰囲気を感じて。それぞれのバンドに個性があるし。もちろん、凛として時雨も、そういうバンドの中のひとつだと思うし。
中野
ありがとうございます。
小室
だってバンド名からして自由だよね(笑)。
中野
そうですね(笑)。
小室
凛として時雨って、どういう意味なの?(笑)
中野
バンド名を付けたのはうちのギターなんですけど、そんなに深い意味はないと思います。「凜」っていう言葉を使いたかったんだけど、使うとしたら「凛と」じゃないと、1つの意味として成り立たないっていうのがあって。それで、「凛と」っていう名前もな~ってなったときに。ぱっと「時雨」っていう文字が浮かんだらしいんです。
小室
へえ、感覚的に。
中野
ええ。僕らの曲って、展開が多かったり、1曲の中でコロコロ印象が変わるので、それが時雨みたいなイメージだっていうことで、「凛と」と「時雨」を繋げて、「凛として時雨」にしようって。それをガストで決めたみたいです(笑)。
小室
そうなんだ。僕らは、すかいらーくで決めましたけどね(笑)。
中野
じゃあ、系列としては一緒ですね(笑)。すかいらーく系列で。
小室
ははは。
中野
あと、個人的にどうしてもお聞きしたいことがあって。電気グルーヴのデビュー・シングル(「RHYTHM RED BEAT BLACK (Version 2.0)」)って、TMとのコラボレーションだったじゃないですか。あれって、どういう経緯があったんですか?
小室
確か『オールナイトニッポン』の繋がりだったんじゃないかな。TMも『オールナイトニッポン』をやってたし。
中野
電気グルーヴの第一印象はいかがでしたか?
小室
めちゃくちゃ生意気な3人組だった(笑)。
中野
やっぱり(笑)。
小室
ただ、全然、悪い感じがしないんだよね。もしも日本の公用語が英語だったら、こういう感じのコミュニケーションになるのかなって。なんて言うんだろう……敬語が存在しない感覚というか。
中野
はははは!
小室
でも、それが嫌な印象に繋がらないっていうのは、やっぱり彼らの魅力だと思う。僕自身、話してて凄く楽しかったから。彼らが生き残ってるのも、そういう部分が少なからず関係してるんじゃないかな。
中野
小室さんが電気グルーヴに対して、どういう評価をしてるのかも前から気になってたんですよ。
小室
もちろん、ミュージシャンとして純粋に凄いなって思う。ロンドンに滞在してる時、テレビを点けたら、卓球が映ってたりしたこともあったし(笑)。たぶん彼がドイツのラヴパレードに出演してた時だと思うんだけど。世界で活躍してるんだなって。あと、ツアーに向かう新幹線で卓球と偶然会うことが何度かあって。いつも彼は「ここで降りるの?」っていう、とんでもない駅で降りるんだよね。 「何でこの駅で降りるの?」って聞いたら、「これからDJに行くんです」って。卓球は、そうやって地方の街に出かけていって、音楽でみんなを楽しませてるんだなって。
中野
めちゃめちゃいい話ですね!
小室
CMJKもデビューしてすぐ電気グルーヴを辞めちゃって、どうなっちゃうのかなと思いきや、いまや名アレンジャー、名プロデューサーとして活躍してるし。ピエール瀧に関して言えば、いまや日本のエンタテイメント業界に、なくてはならない存在になってるよね。
中野
それぞれリスペクトできるというか。
小室
うん。さっきのV2の話に繋がるけど、電気グルーヴも周りを固めるチームが良かったんじゃないかな。じゃないと、あそこまで自由にできないと思う。キューンっていうレーベル自体、ソニーグループの中では、かなりぶっ飛んでるというか。それこそ一時期、Xも所属してたし(笑)。そういう意味では、ミュージシャンの魅力はもちろん、彼らをサポートするチームっていうのも実は凄く重要なんだよね。
中野
これも是非、小室さんに伝えたいんですけど、以前DOMMUNEで2時間ぶっ続けでライヴをやったことがあったじゃないですか。
小室
ああ、完全に即興でね。
中野
あの演奏を観てかなり衝撃を受けて、僕はいつか小室さんとセッションをご一緒したいと思うようになったんです。シンセとドラムで。実際、そういうことって可能だったりするんですか?
小室
全然可能だと思いますよ。実際V2でもやってるので。
中野
今日は、この思いを直接、小室さんに伝えたかったんです。
小室
でも、年齢的にも、今ぐらいの時期に中野君がそういうことをやっておくのは、たしかに今後の音楽人生のためにもいいかもしれないね。周りも含めて、キャリアを重ねれば重ねるほど、冒険することが難しくなっていくから。
中野
やっぱりそうなんですね。
小室
あとは、繰り返しになっちゃうんだけど、好きにやらせてくれるチームの存在だよね。ステージなり環境を用意してくれる人たちが、どれくらい面白がってくれるかっていう。
中野
なるほど。
小室
中野君は曲作りはしないんだっけ? ドラム一筋?
中野
そうですね。
小室
それは逆にやりやすいかもしれない。

──そのやりやすさの理由というのは?

小室
作曲とかに凄く精通してる人というのは、コードや旋律とか、自分の行きたいところがはっきり決まってるから、一緒に何かを作る場合、最初にお互いの妥協点を見つける作業から始めなければいけないので。もしも中野君と僕が一緒にやるとなると、音楽性はもちろんだけど、一番大事なのはグルーヴやリズム感を追求していく作業になると思う。ピアノも、打楽器のひとつではあるので。
中野
そうですよね。
小室
打楽器同士、どこで折り合いを付けるかっていう。それさえ見えれば面白いことができるんじゃないかな。

──そろそろお時間ということで、最後に中野さんから小室さんに「これだけは聞きたい」という質問があれば。

中野
そうですね。今の時代に、プロのミュージシャンとして活動を続けていくにあたって、一番必要なことは何だと思いますか?
小室
CDの衰退だとか、ここ数年で音楽を取り巻く環境が劇的に変化してるけど、ある意味、今の状況ってピンチでありチャンスであると思うんだよね。ここ最近、色んな人に質問されるたびに答えてるんだけど、CDはレコーディングで録音した音と、実際、市場で売られている音が明らかに違うわけで、今後はハイレゾであるとか、CDよりも良い音で音楽を聴けるメディアがどんどん浸透していくと思うから。
中野
そうですよね。
小室
だから音楽を取り巻く環境について、あまりネガティヴに考えないということが、まずは大切なんじゃないかな。
中野
決して音楽そのものが衰退してるわけではないですからね。
小室
そう。今後間違いなく、自分たちの伝えたい音がリスナーに届く日が来ると思うし。ただ、そこで重要になってくるのが肝心の音楽の中身なんだけど。
中野
どれだけ伝える技術が発達しても、音楽そのものに魅力がなければ全然意味がないですもんね。
小室
そこの部分だけは、元が良くないとどうしようもないと思うので。
中野
それこそ身も蓋もないですよね。
小室
あとは時代の変化についていける柔軟な姿勢も、今後、さらに大事になってくると思う。でも、さっきの話を聞いて思ったんだけど、ギタリストの音を聴いて、自分の演奏を考えるっていうのは、プレイヤーとして柔軟な思考を持っているということだと思うんで。
中野
ありがとうございます。
小室
そういう直感を研ぎ澄ましていれば。音楽だけじゃなくて、どんな表現にも当てはまると思うんだけど、最終的には「カッコいい」か「カッコ悪い」か、ただそれだけのことなので。その判断基準においては、音楽評論家も、お小遣いを貯めてライヴを観に来てくれる10代のコたちも全く一緒だから。結局、そこを意識できてるか、できていないかで、ミュージシャンとしての今後の道のりも随分違うものになるんじゃないかな。
中野
肝に銘じます。今日は本当にありがとうございました。
小室
こちらこそ。いつか一緒に何か面白いことができるといいね。
中野
はい。是非!

text by Satoshi Mochizuki

photo by Sachiko Yamamoto

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